中庭に面した廊下で、僕を見た先生は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「どうしてまだ帰っていないんですか」
「先生を待っていました」
「何故」
 たった二文字の言葉は突き刺すような鋭さと冷たさを持っている。けれど僕は気にも留めない。
「好きです」
 と言うために。
「先生となら地の底に落ちたっていい」
 まっすぐに目を見据えてそう言うと、先生は更に眉間に皺を寄せた。
「私は地の底に落ちるつもりなんてありません」
 そう話す先生の目が一瞬泳いだのを見て取って、僕は口元を緩めた。

『例え地の底に落ちようと、私はあなたなど助けたりしませんから』